介護職の人間関係をサポートする

介護職のそわ道
目指せ充実チームケア

介護職のそわ道 > 目指せ充実チームケア > 4-7.「どうしたいのか」、「どうして欲しいのか」

~働きやすい介護職場づくりの工夫~
4-7.「どうしたいのか」、「どうして欲しいのか」

スタッフが管理者に持ちかける相談には、なにかの陳情であったり、不満であったりする場合があります。その際、管理者が対応を誤って、スタッフとの信頼関係が壊れてしまうことがあります。スタッフの訴えを頭ごなしに否定してしまったり、逆に何でも応じようとして、管理者自身が疲れ果ててしまったり、対応を先送りにしてスタッフに失望されたりするのです。

本節は、「不満の仕組みを知ること」の章と関連していますが、管理者が、スタッフから陳情や訴えを受ける際、どのような心構えでどのような対応をしたらよいか。念頭において欲しい要件を述べます。それは、問答集のように、こう言われたらこう対応するというような画一的なものではありません。管理者の姿勢、心がけのことです。

 

スタッフは、自分が言いたいことを必ずしも、一回で理路整然と訂正なく言い尽くせるとは限りません。大抵はスタッフ自身も、自分の言いたいことをうまく言えずに、自分の伝えたいことを十分伝えきれずにいます。特に、スタッフにとって深刻な内容であったり、強い思い入れのあることだったりすると、感情的になりがちで理性的に話しにくくなります。ですから管理者は、その場でスタッフの言いたいことをすべて察して対応する必要はありません。それは現実的ではありません。

管理者はスタッフに、どうして欲しいのかを聞いてください。実際に、「それで、どうしてほしい?」と尋ねるのです。スタッフに尋ねることなく、おそらくこういうことを言いたいのではないかと推察したり、先回りしたりすると、スタッフは自分の語るペースを崩されてしまい、”言えた感”が得られず、納得しにくくなります。

さらに、スタッフは自分の言いたいことを正確に伝えることができるように、言い直したり、質問したりして、コミュニケーションの工夫をする機会を失ってしまいます。

また、管理者の推察が間違っている可能性もあります。そうなれば用件が伝わらず、話がこじれてしまいます。推察するよりは相手に聞くほうが正確です。

 

管理者が、「それで、どうしてほしい?」とたずねると、大抵スタッフは、せきを切ったように要件を述べ始めます。それが第一歩です。

もし、「どうして欲しい?」という問いに、スタッフからの答えがあった場合、管理者はそれを聞き流してはなりません。スタッフが要望を出すには理由があるはずです。スタッフがよほどとんちんかんなことを言っているのでなければ、そこには、チームの課題やスタッフ本人の課題が示される可能性があります。例えば、教育が不十分な新人職員がいることを不満に思うスタッフの指摘は確かにそのとおりかもしれません。それはチーム内でおきていることですから、チームの課題です。ですからスタッフ自身は、新人教育を人任せにしていないだろうか。たとえ教育の責任者でないにしても、気が付いたことで自分にできることを十分にやったのだろうか。そういうことも課題として浮き彫りにできるのです。

 

管理者は、スタッフが自分にどうして欲しいのかが分かったら、こんどは、「それで、あなたはどうしたい?」とたずねてみてください。管理者だけが請け負わねばならない案件でないのなら、メンバー全員で取り組めばよいのです。あるスタッフが問題意識を持って相談を持ちかけた以上、メンバーとして、自分は何をすべきか、ということも考えるべきなのです。そういう意味で、「それで、あなたはどうしたい?」とたずねてみるのです。

相談を持ちかけたスタッフが、もし管理者の問いに答えられれば、おおむね相談は相談として成り立っています。相談を持ちかけて、①問題を提示したスタッフが、その対策として、②自分はこうするから、③管理者はこうして欲しい。というメッセージを送ったことになります。形式的には①②③がそろっていれば筋が通っているのです。管理者は、どういう返答をするにしても、論理的に誠実に応じなければなりません。

なお、「それで、あなたはどうしたい?」という管理者の問いに、実際は、スタッフはすぐには応えられずに口ごもる場合が少なくありません。相手にして欲しいことははっきり言えるのに、自分のしたいことは言えないというケースは案外多いです。それだと、自分は何もしないということになってしまいますから、フェアではありません。スタッフには、自分はどうしたいのか考え直してもらう必要があります。そうすれば、スタッフ自身、自分がほんとうに言いたいこと、したいことをはっきり自覚できるようになる。また、抽象的に語るのではなく具体的に語る訓練になるのです。“言えた感”、“伝わった感”がちゃんと実感できるようになるのです。

 

結果として、管理者は、スタッフが自分に何を望んでいるのか、スタッフ自身はどんなことをしようとしているのか、誤解なく理解できるようになります。話がかみ合わなかったり、人間関係がこじれたりするのを回避できるのです。また、自分はなにもせず、ただ文句を言いたいスタッフは減ります。